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理事のコラム

必ず来る大地震に対して、工務店が準備すること

 6月19日に(一社)東海木造住宅協会の耐震部会に呼ばれ、講演する機会を得ました。東海耐震マイスター倶楽部から変わった耐震部会は、住構協の会員で構成されており、耐震診断、補強も積極的に提案、実施しています。そのようなメンバーから、初心を取り戻すことを目的に、「工務店の使命」がどうあるべきかと質問され講演を行うことになったのです。内容をまとめましたので、読んでみて下さい。
 東日本大震災、熊本地震は記憶にあると思いますが、この教訓を学ばなければなりません。たくさんの方が命を落とされた原因は明確です。その原因を取り除くことで、危険にさらされている方たちの命を、地震から守ることはそれほど難しいことではないのです。二度とこのような悲惨な出来事が起きないように、今日から準備することが、地域に根ざす工務店様にとって重要なことなのです。しかし、消費者も、業界関係者も準備ができていない現状があります。私たち工務店が、意識を変え、行動を変えることで、命を守ることができると考えています。
 まずは、津波や洪水などの危険がある地域は高台への避難力をつけることです。しかし、そもそも耐震性能が低い家では、地震の瞬間に家屋につぶされ、逃げるに逃げられなくなるという現状があります。私たちが得意とする耐震化と、避難訓練が必要なのです。特に、夜の避難訓練は指導すべきです。障害者や高齢者などの避難力が追い付かない方は、リスクのある地域から高台へ移転することを真剣に提案するべきと考えています。熊本地震からの教訓は、大地震は繰り返し来るということから、建物には築基準法の1.5倍の強度を持つ耐震性能等級3が必要なこと、そして地盤の改良です。地盤に関しては地歴を調査し、以前、田や沼、河川敷であった場所など、液状化の可能性を排除することが必要です。残念ながら、そのような地盤では、揺れを増幅してしまうからです。地域の方の命を守るという認識を持って、事前防災をしなければなりません。
 残念ながら大地震が発生したとき、工務店様が果たす役割は極めて重要です。倒壊した建物から救い出すためには、木造建築の知識と道具が必要だからです。式典で被災者からいただいた「近くに住む大工さんが助けてくれた、ありがたい」という声を、救助に大活躍した神戸市長田区のA工務店の社長から教わりました。木造住宅が街に存在する限り、その近くに工務店様があるべきなのです。そして、震災後、数週間は修繕工事です。応急仮設住宅を建設するのも、工務店様が中心でなければならない。更に、復興も木造住宅を求める人が多いことを考えると、工務店様の役割です。使命は限りがないのです。
 福島県で約1000戸の応急仮設住宅を建設してきました。その後7年が経過し、維持管理を行う中で、被災者との信頼関係を構築できました。帰村する上で、自宅を改修、リフォームをしないと住むに住めないため、頼まれ仕事として舞い込むのです。地元の工務店様は被災者でもあり、この7年で廃業する方が多く、被災者は相談する相手がいない状況です。もともと木造建築の農家が多く、ハウスメーカーやリフォーム専門会社では、対応できないつくりの家も多いのです。大型リフォーム、建て替えもどんどん出て来ます。
 私は、もはや工務店様が一社で生き残れる時代ではないと考えています。もちろん、会社としての力はつけていかなければなりませんが、販売店様、建材メーカー様、目的を共有できる工務店様と協働することしかないのです。ライバルはハウスメーカーだけでなく、家電量販店や外資系のホームセンター、家具販売業者、通信販売などになってきています。今までには考えられない業界の会社が、お客様に24時間365日密着して、住まいづくりを提供しています。それらの企業、組織と戦わなければならないのです。近くの同業者と、お客様を取り合っている場合ではないのです。講演の中で、販売店様を中心とした受注活動実例を紹介させていただきました。目的を共有化できるメンバーで、知恵を絞り、協働体制ができるグループは生き残る。そのようなグループを応援していきたいと思います。




 

木造建築は、どこまで復権するのか

 公共建築物等木材利用促進法が制定され、丸8年が経ちます。法の施行に合わせて対応部署を立ち上げ、私が責任者として数カ月にわたり担当しました。当時を振り返ると、住宅業界の中で仕事をして30年が経っていたこともあり、木材業界や建設業界は似て非なるものと感じ、BtoCからBtoBへ変わることに悩んでいました。特に、営業スタイル、マーケティングに悩まされました。まずは、建築物の大きさと発注体系の違いから、営業する相手が建設会社の所長、設計事務所などになります。元請事業しかやったことがなく、下請け営業は心の中に葛藤がありました。明らかに、「下請け、材料屋、資材屋」という上から目線の対応に、心穏やかに居ることができないのです。更に業界のルールがあります。入札制度が中心で、発注者の役所とつながっている各団体の協会が仕切っている。おまけに、中心となっている会員は、木造建築の知識、経験が圧倒的に不足しているから、木造という新しいことを受け容れないことが多いのです。
 一方、民間事業は特命が多く存在し、元請事業者である建設会社の独断場となっています。コスト優先は言うまでもありませんが、材料だけの発注は少なく、サブコンが材工で受注するため、数社のサブコンに同じ見積もりを出すことになります。木材事業者にとって、利益確保が難しいビジネスとなり、なかなか取り組めないのです。
 当時は、「法律をつくってまで促進しようと言っても、簡単ではないな」という感想を持っていました。しかし、追い風は吹く。オリンピックや働き方改革の影響から、木造以外の鉄骨、RC構造の施工単価の急騰です。木造は、住宅業界の動向に大きく影響を受け、建設業界と一線を引いているので影響は少なく、施工単価の差が開いていったと思われます。現状は、木造でできる建築計画なら、木造に変更しようという波が起きています。事業主側に立っている銀行やコンサルティング会社、不動産会社なども意識が変わってきました。当然、市町村の役人も気付き始めています、「今は、木造建築の方が明らかに有利だな」と。
 今、私は「小さな土地の有効活用」に特化した木造建築の元請業を担当していますが、案件の相談が急増しています。上記の会社から、事業を進めるに当って、予定していた建築費が合わないといった相談なのです。中を見ると、設計事務所が付いている鉄骨建築、RC建築、またはハウスメーカーの企画なのです。しかし、そのままの企画では木造で建築できないケースがほとんどで、木造に合わせた企画に変更して提案しています。例えば、4階建てが3階建てに、床面積が300坪から150坪になりますが、驚くほど施工価格に差が出ます。そして、収支も大きく変わります。最終的にどちらを選択するかは事業主になりますが、先の見えない時代を迎え、ハイリスク、ハイリターンの事業ではなく、ローリスク、ミドルリターンを選択していくのです。それを担っていくのが、木造建築ではないかと感じるのです。
 法律は「公共建築物等」となっていますが、やはり、民間事業者が木造建築を選択していく時代に入っていくことが、一気に木造建築の普及につながります。民間ですから「経済的メリット」が最も重要なのです。高層マンションやショッピングセンターなどの大型建築物は、鉄骨建築やRC建築で良いのです。しかし、 3階以下の低層建築や、1,000u程度の建築は木造がいいではないですか?流通材を使うことで、経済的なメリットを存分に発揮できる。耐火性能も、劣化対策も驚くほど進化しているでしょう。木造建築を認めない時代は過去のものであり、時代の最先端の構造部材が「木」なのです。もはや、部材の特徴を生かした建築で進めなければならないのです。その為には、木造建築を理解した設計士や施工管理者が自信を持って、住宅業界から建設業界へ出て行く必要があるのです。間違いなく、木造を行なっている工務店様が活躍する時代になります。


 

定年後に変わる男たち

 賃貸住宅の請負事業に取り組むようになってから、お客様の年齢層がずいぶん変わりました。分譲住宅や注文住宅のお客様は30、40歳代でしたが、今では、60歳から80歳代になり、平均70歳です。私の年齢でも「鈴木さんは、まだまだ若い」と言われ、80歳代のお客様からみれば、はな垂れ小僧です。ほとんどの人が、時間を自由に使える自営業か、小規模の投資家となっています。また、建築や不動産が好きなのでしょう。良く勉強されており、30歳代のお客様とは知識、経験の量が違います。一回の商談に数時間かけるのは当たり前、昔話から事時問題までよく話をされます。その時は、本当に生き生きしているのです。
 それ以外にも元気な人を良く見かけます。例えば、お客様である70歳になるA氏は元市役所の公務員。勤務中から建築行政に関わっていたこともあり、自分が考えた賃貸住宅を建てたいと、コツコツ不動産投資を行っています。今では3棟を所有しており、月に数百万円の売上高を持つ事業主として成功している。小さな古建物を買って、他人に貸す。空き室になったと同時に、建替えを企画する。自分で考えた間取り、仕様、設備を条件にハウスメーカーに対してコンペを行う。毎日、不動産探しを楽しそうに行なっているのです。
 同僚の65歳になるK氏は、築150年になる実家を民泊施設に替え、週末は宿泊客と「ワイワイがやがや」。地元の経営者たちとの交流も進み、地方創生に貢献している。今ではマスコミにも引っ張りだこです。友人の67歳になるS氏は、特別支援学校の先生を退任し、近郊農業と都会の住民をつなげようと、自ら農業を始めました。都会の住民に週末だけできる農業の仕組みをつくり、地元住民参加の収穫祭などを実施していく中で、地元の農民に担がれ、今では市会議員2期目で大活躍しているのです。
 一方、一流の大学を卒業し会社に勤務していたにもかかわらず、60歳で定年を迎え、65歳まで会社や子会社へ通勤しているサラリーマンは、目が死んでいる人が多い。「この給料では、これしかやらない」「ぶら下がったほうが楽」と言葉にする人まで出てくる。もう直ぐ手が届く年金を受けとることだけを楽しみに生きている。周りがどんなに忙しくしていても、協力体制よりも自分の権利を主張する。資金を持っていても、投資する勇気もないから、せっせと図書館やジム通い。そのような人に限って、趣味があると主張していても、残念ながら長続きしない。年金が出るまで企業に勤務できるこの制度は、人間にとって、本当に良い制度なのかと考えてしまいます。企業への義務付けは企業にとって重荷で、個人にとってお荷物と感じる仕組みになってしまっているのではないでしょうか。だからか、定年退職制度を撤廃している企業も増えてきています。このような会社のように、「役に立っている」「必要だから」といった環境を作ることのほうが先ではないかと思ってしまいます。
 「役に立ちたい!」と思って生きるのか、「ぶら下がってでも、楽をしたい」と思って生きていくのか。「定年退職」「年金」という日本の素晴らしいシステムが、若いときには考えたことのないことを考えさせてしまいます。真面目な人間ほど若さをどんどん失っていく。企業が義務付けされている65歳勤務、その後どうするのか?本当に社会にぶら下がることを良しとしていくのか?やはり、生きている限り「役に立ちたい」と、心の底で考えている男は多いと思うのです。「人の役に立っていたい」は、男の本能ではないかと思う。「人=家族・両親・友人・大切な他人」と言い換えることができます。それが、社会での男の居場所なのです。いくつになっても、挨拶では「今は、何をやっているのか」「今は、○○のために△△で、毎日忙しいのよ」と会話するのが男だからです。その点、私たち住構協の会員様には「命を守る」といった、社会に受け入れられる「役立つ技術」を持っています。困っている人たちがまだまだおり、いくつになっても「役に立つ」のです。告知活動も不十分であり、やることはたくさんあるからです。私ももう直ぐ、定年退職になります。その後も変わらず「人のために役に立っている」と思えるように、努力していきたい。「ああ、鈴木さんがいてよかった、出会えてよかった」と言ってもらえるように日々活動をしていきたいと思います。

 

心に残る言葉

「失敗が脳を成長させる」
 「女の機嫌の直し方」の著者、黒川伊保子氏の言葉。脳科学の専門家であり、AIの研究に従事。
 脳は体験によって進化する。失敗した脳細胞には、電気信号が流れなくなり、成功すると、どんどん電気信号が流れる仕組みになっている。あらゆることにチャレンジし、失敗と成功をどんどん経験をすることで、脳を成長させるということらしい。幾つになっても,チャレンジが熱を持たせ、脳が若くいられるのですね。

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