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理事のコラム

新型コロナウイルス問題と住宅事業

 ある程度は会員の皆様も想定はしていたでしょうが、新型コロナウイルス感染症が日本経済に大きな影響を及ぼしていますね。住宅業界では、住宅設備や部材の納品が大幅に遅れ、引き渡しが遅れているほか、契約時に工期が確定できないといった不都合が発生しています。契約済の建物については、業界を上げて優先事項として対応していますが、今後の建築を考えているお客様へのフォローができていません。数カ月後の着工棟数の落ち込みが心配になります。外出の自粛から、集客イベントの中止、間取りや仕様などの打ち合わせの延長といったことも生じており、今後の受注に影響が出てくるでしょう。
 更に、プレカット工場の生産調整や、職人や運転手の休業などについても、今後顕在化してくる可能性があります。他の業界と同じような状況(自宅待機やテレワークなど)になると、現場作業中心の会社や中小企業が多い住宅業界は、深刻な状況に陥ってしまいます。しかし、ウイルスへの感染に関しては、相対してコミュニケーションを取る機会もそれほど多くなく、現場に行くにも車を使うことが多いため、感染しにくい環境にあるというのはメリットと言えるかもしれません。このような状況下においても経営を安定させなければならないため、営業・受注活動を変えていきたいものです。
 今の状況は、東日本大震災発生後の福島県で起きたことと良く似ていると感じています。放射能汚染を避けるために外出ができず、人と接することを恐れ、農作業もままならない。他県への移住を望んだ人も多く、残った人は応急仮設住宅にこもるしかありませんでした。新築工事はストップし、分譲住宅も売れませんでしたが、住宅の修繕工事と仮設住宅建設仕事は驚くほどありました。
 N社の郡山営業所は、震災前は分譲住宅を専門にしていましたが、直ちに方向転換しました。工事、設計職は応急仮設住宅建設の支援に集中するとともに、営業担当者はOB施主様を訪問し、修繕とお悩みごとへの対応を徹底しました。また、手づくりニュースレターを充実させ、情報を出し続けました。新築分譲を再開するまでには3年を要しましたが、その間の仕事は、修繕、快適・安心リフォームなど、OB施主様に支えられたことで凌げたのです。それが今現在も続いており、分譲を中心としていた会社でありながら、リフォーム受注のノウハウができ上がったのです。
 上記の経験から、ホームページやメール、SNSを活用し、施工現場の生の情報発信を毎日行うことは、事務所でコツコツと一人でもできると思っています。また、「今月の自慢の住まい」「快適リフォームの実例集」など、OB施主様に葉書でもよいので、画像とコメントをつけてダイレクトメールで発信するのもよいでしょう。このような外出を控えなければならない時に、葉書一枚でも来ると嬉しいものです。更に、「安全に暮らすための住まい方」「自宅で過ごす楽しみ方」などのニュースレターも発信したいものです。換気も重要ですから、ノンダクトタイプの第一種換気とするリフォームの紹介や、DIYや簡単断熱改修(小屋裏断熱)などの紹介もよいでしょう。お客様と直接に応対しなくても、信頼づくりはできると考えています。
 新型コロナウイルス感染症問題で、政府も経済対策を打ってきました。特に、中小企業向けの支援が中心になっており、工務店経営者として、この経済対策をどのように利用するかが重要です。旅館やレジャー施設などが倒産に追い込まれていることを考えると、運用資金などの融資についてはこれまでと比較して緩くなるのではと思っています。現実、資材不足により引き渡しが遅延する可能性が高まっているようですから、運用資金を借り入れているメイン取引銀行に相談する価値があると考えています。
 また、この問題の終息がいつ頃になるか、考えておく必要があります。ワクチンや治療薬ができると、消費者心理も変わると思います。今まで、様子見をしていたお客様が動き出す時期がゴールデンウィークであれば、市場も動くことになるでしょう。もしも終息の時期がそれよりも遅くなるようであれば、今年中の新築住宅の完工は難しくなり、業績にも大きく影響してしまいます。その点、時期に左右されず、決断も早いリフォームビジネスには、チャンスが出てくると思っています。


 

工務店事業を模索する

 新しい会社に移動して感じるのは、どの会社においても抱えている課題はそれほど変わらないということです。一つが、お客様をどのように探すかといった集客であり、もう一つが協力会社を含めた工事体制と施工管理のレベルアップです。
 まずは集客方法ですが、お客様がプロユーザーか最終消費者かで大きく変わります。今後、地主、投資家、法人、仲介専門会社などのプロユーザーの比率が高まっていくと思いますが、そうすると経営者の営業力が大きく影響していきます。経営者の商圏内における人脈の広さが試されるのです。仕事の出来栄えもありますが、お客様が抱えている課題や問題について、自分のことのように取り組み、解決のお手伝いができるかどうかが重要です。「住まいのことなら」といった前提条件を付けるのではなく、「困っていることがあれば、一緒に考えます。専門家も紹介します」といった心構えで、信頼力を付けていくのです。
 商工会議所やライオンズクラブ、ロータリークラブとは別に、BNIといった異業種による交流会が普及しつつあります。一業種一社という制約の中、自分の仕事だけでなく、メンバーの仕事を創出するといった使命を持ったグループです。要は、自分を含めたメンバーの人脈をフル活用して、仕事につなげようとしています。また、65歳以上の元役員や銀行員、営業担当者といった経験者が持つ人脈のネットワークを活用し、不動産や建築請負情報を吸い上げるといった不動産会社が出てきています。縛り付けることをしない雇用契約とすることで、自由に活動していただき、成果が出たら報酬を渡すといったものです。65歳になると年金がもらえますから、無理して仕事をする必要がなく、自由な時間の一部だけを使えることが魅力なようです。私も年に数件情報をいただき、建築請負やリフォーム、中古マンションの成約をしています。
 最終消費者に関しては、OBのお客様も含め、消費者との接点づくりの活動をするしかないですよね。自社の商圏内のリストをつくり、完成見学会や感謝祭、セミナーなどのイベントをコツコツと行い、情報を出し続けてお客様との接点を強化し、自社を身近な存在にしていきます。これによりお客様からの信頼を勝ち取るのです。ホームページやSNSを活用することは当然です。
 言うまでもなく、建築業で最も重要なことは現場の施工力です。品質、工期、精度、安全性、近隣配慮、コストなど、一つでもレベルが低いと受け止められると、建設会社としての存在価値が失われます。それには、資材流通会社を含めた協力会社の支援が必要ですよね。しかし、コストと矛盾する内容でもあります。単純に単価を上げれば腕の良い職人が集まる可能性が高まるでしょうし、腕の良い職人が集まれば品質、工期、精度も上がるでしょう。しかし、原価が上がれば、ターゲットとなるお客様を見直すことにもなりかねず、営業戦略を見直す必要も出てきます。
 そこで、意識して行っているのが「安定発注」と「段取り」です。「安定発注」は、安定受注ができて初めて可能なことですが、受注金額を変えたり、工期の枠を広げることも実践しています。受注能力が高まれば、社員大工を抱えて多能工を育成していくこともできるはずです。更に重要なのが「段取り」です。監督の技量もありますが、資材の納材システムと、協力施工店とのコミュニケーションや情報の共有化も重要です。最近では、モバイルを使って現場の情報をリアルタイムで共有化できるようになってきました。新築でもリフォームでも、情報共有ができる会社とできない会社とでは、職人の生産能力が大きく変わってしまいます。一年間を通じて、気持ちよく稼げたか?を関係者に実現させることではないかと思います。
 工務店事業を経営して、一カ月が過ぎましたが、毎日のように問題が起き、課題が見つかり、対策を考え続けています。もちろん、思ったようには進みませんし、簡単に解決できることではありません。私自身が、知識も人間関係も圧倒的に不足しています。一から学ばなければならないことも多くあります。しかし、それが楽しいのです。理念やビジョン、目標をつくり、一年後にどこまで達成しているのか関係者が分かるようにしていきたい。それが今の私の生きがいになりつつあります。


 

東日本大震災から9年

 あの東日本大震災から9回目となる3月11日を迎えました。当時、小学三年生だった千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手は、一瞬にして実父と祖父母を失ったといいます。困難を乗り越えただけでなく、選手としても人間としても大きく成長し、震災に関するコメントも素晴らしかったと思います。当時のことを恨むこともなく、今後、子どもたちの見本になっていきたいと話していました。あのような困難を乗り越えると、ここまで人間力が高まるものなのですね。私と同じ千葉県に住んでいるということもあり、佐々木選手の活躍を心待ちにしています。
 あの大震災は、耐震化の重要性と避難方法について教えてくれました。特に、「釜石の軌跡」はマスコミによる報道や書籍などでも有名になりました。首都直下型地震、東海・東南海地震の発生が懸念される太平洋側沿岸の会員様は、消費者に伝えてほしい内容です。群馬大学で教鞭を取っていた片田敏孝教授は、釜石市と提携して、小中学校の子どもたちに地震や津波から避難する方法や心構え、住民の方への関わり方を繰り返し教え、訓練していました。平日の昼間、大人は仕事に出かけ、高校生も別の町にいることが多く、高齢者と小中学生しかいないことを想定しています。だからこそ、小中学生が助けられる側になるか、助ける側になるかで、町全体の災害対応能力が大きく変わります。そこに注目し、数年間かけ実践していったのです。そして、震災当日、子どもたちは見事に結果を出しました。中学生が低学年生の手を引き、事前に調べてある高齢者の一人ひとりに「逃げましょう」と声掛けをしていきます。子どもたちが身障者の方や高齢者の車いすを押して逃げました。避難場所に逃げ込んだ中学生が、がけ崩れの兆候を見抜き、避難場所を変えるという判断をしました。あのようなパニック状況でそんなことができたというのは、訓練や意識改革がいかに重要かということを教えてくれます。一方、マニュアル通りに消防会館に逃げ込んだ大人たちは、「ここなら大丈夫」という慢心が大きな被害につながってしまいました。想定以上の津波が会館を飲み込み、150人を超える人たちが命を落としてしまいました。
 当時、小中学生だった子どもたちが成人になってきました。彼らのほとんどが、釜石市を離れて仕事をしています。当時の経験を生かした教訓を日本中に普及してくれると、被害が激減するはずです。地震大国の日本で暮らす以上、「忘れない」だけでなく、日本の文化となるまで全国の小中学校生全てに引き継ぎたいものです。
 耐震化の重要性は、今さら言うまでもありません。地震で倒壊するような建物がたくさんある地域では、津波対策どころではないでしょう。逃げるに逃げられないのです。倒壊している建物によって避難通路が塞がれます。また、倒壊した家から人を助け出すことはほとんど不可能です。建物が強ければ津波の勢いを緩めることもでき、逃げる時間を確保できるかもしれません。津波が来る可能性のある地域こそ、建物を強くしなければならないのです。耐震性能を強化することができる私たち工務店の役割は、津波が来る地域でこそ重要になってくると思うのです。
 東日本大震災の教訓が生かされるかは、この数年で決まります。応急仮設住宅が撤去され、避難地域が解除されるようになりました。10年も経つと生活環境が色々と変わり、徐々に過去のものとなっていきます。耐震リフォームを行っている私たちが、先頭に立って言い続けていかなければなりません。イベントを控えなければならない昨今ですが、告知活動はしていきましょう。「命を守るリフォームをしましょう!!」と。

 

 

心に残る言葉

「忠臣二君に仕えず」
 秀吉の家臣、宇喜多秀家の言葉。秀吉に仕えた秀家は、関ヶ原の戦いで敗者となり、徳川家によって八丈島に島流しになる。35歳を過ぎたばかりであったが、八丈島で生きることを決意し、農作業を行い、1,000人ほどの島民に教育を施し、島民に愛されながら84歳の生涯を八丈島で過ごしたという。幕府の使者によって大名復活の話があったが、一貫して上記の言葉を言ったという。


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