個人情報保護方針お問い合わせ

理事のコラム

住まいの耐震博覧会に参加して

 今年の「住まいの耐震博覧会」と「木と住まいの大博覧会」が2月3〜5日の3日間に渡り、東京ビックサイトで開催されました。来場者数は6万6,000人を超え、活況となりました。時期もいいですね。新年になって、お客様の気持ちも「今年こそ、住み替えよう!建て替えよう!リフォームしよう!」となっていることが多いからです。天候にも恵まれ、住まいづくりの応援をしてくれたように思えたのです。
 今回も見所はたくさんありました。木材、メーカーブース、耐震コーナーなどまだまだ新しい発見ができます。まず木材ですが、各県の県産材の出展が多くあり、ヒノキ、スギをはじめ特徴のある商材が多くありました。構造材や内外装材だけでなく、家具や小物などの木製品が増えました。来場者がその場で買える木材の小物も多くあり、どのコーナーもにぎやかでした。展示物では、縄文時代の火山の噴火で地中に埋もれ、発掘された神代杉の柱(1.2メートル角、長さ7m)と板もの(幅1メートル、長さ7メートル、厚さ0.3メートル)、スマートウェルネス住宅の観点から木の調湿作用を前面に出したインテリア空間、中・大規模木造建築物(店舗や共同住宅)の実物大構造躯体などです。また、技術力を魅せる「磨き丸太のネジ組み」「鎧張り」「CLTのモニュメント」など、建築の専門家からも「初めて見た」といった声が聞こえてきました。メーカーブースでは、10年間掃除が必要ないレンジフードや劣化しにくい外壁など、長期に渡り手間のかからない商材が目立ちました。リフォーム商材では、工事中の音やにおいに配慮したフローリングや、制震部材をはじめとした耐震補強部材も多くありました。耐震コーナーでは、47都道府県の補助金制度や組石造の補強方法、特殊な含水率測定器などが注目を集めていました。
 全体的な傾向として、「IoTの住宅での活用」と「健康寿命を延ばすために住まいの環境を改善する」ことが提案されました。木材という建築資材が今までにないほど注目を集め、どのメーカーも商品化を進めています。木材は構造躯体での利用が多いのですが、どうやって他のところで利用を増やせば良いのでしょうか?インテリアだけの発想ではなく、ペレットなどの暖房、断熱材、下地材、養生用、梱包材などへの木材利用を、消費者に最も近い私たち工務店が考える日が近づいていると感じます。また、健康寿命を延ばすための工夫は、断熱の仕様だけでなく、浴室や寝室、リビングなどへの工夫、水や遮音、電磁波といったデリケートなことも理解していかなければならない時代になってきました。医療との組合せ、物理学者や科学者などの知恵も借りていくことになりそうです。林業や住宅行政が国土交通省管轄だけでなく、厚生労働省の分野に入ってきていると見えるのです。
 また、目立ったのが営業の場に活用する住宅会社が増えていることです。地元のお客様にバスツアーをご案内し、住まいの耐震博覧会と東京観光を一度に楽しんでもらおうと言うものです。浅草、築地といった観光地との組み合わせは人気だとのことです。一日バスでご一緒すれば、お客様との関係性は深くなるものです。信頼を得れば、どのような仕事であっても相談が来ます。このような工務店様は、前日に下見に来て、自社の標準メーカーやイベントなどの見所をしっかりチェックしています。オリジナルコースを事前に作り、来場されたお客様が喜んでいただけるように工夫もしているのです。成果につながるわけです。更に、バスツアー参加者が自社のモデルハウスやショールームに来場しやすくなるよう、リフォーム優遇チケットや景品を配布する会社、同乗者の写真撮影を大々的に行う工務店様、キャラクターショーを上手に活用する会社など、知恵を使った会社が増え、うれしい限りですね。
 今年の耐震博覧会は、東京から始まり、6月に名古屋、7月に仙台、9月に福岡、10月には京都で開催予定です。近くの会員様はぜひ来場いただきたいと思います。各ブースの説明員に質問を浴びせれば、時代の流れだけでなく、今後の対策が見えてくるはずです。そして、二日目にはお客様をバスツアーにお誘いし、楽しんでいただくことに集中してみてください。お客様の住まいに対するお悩み相談が必ず来ますよ。チャレンジしてください。

 

在るものを工夫して

 「イベントルームを見に来てよ」と誘われ、栃木県の正会員であるU工務店様を訪問しました。東日本大震災発生より前に訪れたことがあったので、6年以上ぶりだったと思います。数年前も完成見学会を繰り返し行なうなど、新築住宅の受注は順調でこのエリアの勝ち組の一社でありました。しかし、消費税の駆け込み需要を無理し取り込んで受注数を伸ばした結果、社長の目が十分に届かなくなり、トラブルやクレームが多く発生したといいます。そこでもう一度、経営方針や戦略を見直し、今に至ったのです。事務所はそのままですが、駐車場、下小屋など全く違う風景になっていました。
 まず、新築住宅事業一本ではなく、リフォーム事業とガーデニング事業を本格的に立ち上げたのです。新築住宅受注は得意でしたが、ガーデニングの受注が30%にも満たない。リフォームも言われたらやるといった状態で、特に差別化もできていないという状況でした。そこで、ガーデニングの専任担当者を2名配置し、駐車場を改修して庭園としたのです。その庭園の中には、イベントができるよう、もともとあった竹林を背景に見事なステージを作りました。「家と庭」をしっかり造らないと「家庭」にはならないというコンセプトでガーデニング受注を始めたのです。今では、屋外ステージを利用して、年に2回、コンサートを中心に500名以上が来場するような大規模なイベントを開催しています。
 次に下小屋(築数十年の鉄骨造)を改修したのです。U工務店様の歴史から、過去のイベント風景、実例模型、北限の檜、暖炉などを展示することで、お客様が家づくりを楽しめる空間にしています。ど真ん中には、勉強会もできるように大きなテーブルを配置し、商談室も木のぬくもりが感じられるつくりとなっています。特に感心したのは、リフォームの差別化の一つとして、2坪程度の小さな防音室を備えたのです。当協会の推進会員でもある大建工業鰍フ支援と地元の補助金を得て、それは、それは見事なのです。大きなモニターに映画を映し出し、大型のリクライニング椅子に座ると、男なら誰でも欲しくなる一室。子どもの声も、奥様の皮肉も全く聞こえない、一人分の小さな空間。体験すると、新築住宅でもリフォーム工事でも「俺はこれだけで良い、この空間を造ろう」となるようです。
 U工務店様は、担当の奥様がイベントの開催を生きがいにしていることもあったほど、完成見学のイベントで集客することが得意な会社です。宇都宮郊外で田と畑、山林がある場所で、決してイベントに向いたエリアではないのですが、持っていた砂利敷きの駐車場、ほとんど使われなくなった下小屋を、費用も殆どかけずに生き返らせたのです。新築住宅だけでなく、リフォーム、ガーデニングもひとり立ちができるまで、受注量が増えてきたといいます。
 上記の戦略を実行する上で、組織も変えたのです。これが面白い、社長を入れて16名の会社ですが、担当業務チームが30以上あるのです。営業部門には、顧客満足室、イベント企画室、広報室、営業実績管理室、プレゼン管理室、実務営業部隊の6室が存在し、6名が掛け持ちで担当しています。総務部門には、経理室、使ってまっ課、片づけっ課、健康推進室などが存在しています。工務部門も面白く、儲かってまっ課、資材在庫管理室、パートナー管理室などが存在します。全社員が、営業や総務、設計部門の各室に籍を置き、必ず一つはリーダーになるようにしています。社長がメンバーになっている室もあると言うわけです。身の丈を超えて、あまり無理をすると痛い目にあう。もっと楽しく、もっとお役立ちができることを目指しています。社長に聞くと「まだまだ、中途半端。どんどん変えていかなければ、時代に後れていってしまう」と反省するのです。
 U工務店様の社長は会長の父親から引き継ぎました。実弟や奥様、子供たちが中心となって会社を盛り上げ、販売店をはじめ外部にも協力する人をたくさんつくっているのです。そういう私もその一人です。社長のプラス思考、行動力、発想が人を惹きつけるのです。宇都宮に行ったら、ぜひとも下小屋と庭を見せてもらってみてはいかがでしょうか。学ぶことがたくさんあります。私に一報いただければアポイントを入れます。

 

空家問題を考える

 1月28日、賃貸管理会社、郵便局とタイアップし、「空家問題1000万戸の衝撃」の著者、牧野知弘氏の講演会を開催し、約1100名の横浜市在住のお客様に出席いただきました。相続対策で悩んでおられる方をお呼びしたこともあり、生命保険や賃貸住宅建設などの対策編までしっかり受講していたのが印象的でした。
 講演の中では、全国の空家事情、空き家の問題と特借法、処方箋、新しい都市計画に分けて解説いただきました。空き家の現状は、空家率で見ると大阪府や山梨県、四国4県が16%を超え、低いと思われがちな東京都や神奈川でも10%を超えています。戸数では、ダントツで多いのが東京の81万戸、次いで大阪の67万戸となっています。また、「個人住宅の空き家」がこの5年で18.7%と急増しています。実は賃貸住宅ではないのです。これは、1970年代前半に宅地開発がピークを向かえ一世を風媚した郊外型のニュータウンの住まいが、一斉に70歳を超える世帯主になっているからです。例えば人口が増えている横浜市でも、都心から離れた栄区、金沢区、瀬谷区、旭区、泉区、南区、港南区などの高齢化が深刻であり、総人口も減っています。残念ながら、人口を集めてきた大都市の郊外にこそ空家予備軍が膨大にあるのです。このエリアの空家問題は本気で対策を行わないと深刻な社会問題になる可能性が高いのです。
 しかし、なぜ空き家は放置されるのでしょうか?解体費用が高い、利用価値がないなどといった理由もありますが、更地にすることで固定資産税が高くなることが動けない理由になっています。固定資産税は地方公共団体の主力の税収ですから、簡単に下げることができないのです。住みたくない、利用価値もないのに、固定資産税を含めた維持管理に費用がかかるのです。特借法ができ行政の代執行ができるようになりましたが、空き家の撤去だけでは地域社会の継続は難しく、空き家に対する処方箋が必要であることは言うまでもありません。
 処方箋は残すか、解体するか?二つの方法しかありません。残すのであれば「管理」「貸す」「有効活用」となります。空家管理はいろいろな業界大手企業が取り組み始めました。その先の「有効活用」をにらんでいるのでしょうが、サービス金額が低い事業であり、固定費が重い企業は事業に成功するまでに時間がかかりそうです。一方で「貸す」といっても賃貸住宅にするには無理があります。いくらリフォームしても、子育て世代に不都合な間取りと住宅性能で借り手がいません。「有効活用」ということではシェアハウスや民泊の可能性はありますが、今後運営事業者がどこまで普及するかではないでしょうか。
 解体して建て替える。これがもっとも簡単で有効な策ではないかと思っています。子育て世代が望む間取りと性能を持った小さな賃貸住宅や高齢者対応の「合築」です。3組程度の小さなグループホームの位置づけです。解体しても土地での売却も利用方法が明確でなければ難しい選択になる。
 それ以上に心配なのが、マンションの空き室です。個人の判断では自由にならないのが共同住宅であり、大きな社会問題としてでてきそうです。現在の法律やルールの中では解決策に限界があります。都市計画法や建築条例、建築協定などの改定だけでも早急に変えるべきではないかと思うのです。コンパクトシティ化、固定資産税評価の方法も変える必要があるでしょう。所有権から利用権流通に変える必要もありそうです。
 国や行政の力が大きく影響することはいうまでも有ませんが、状況を良く理解して、自分たちの事業に反映させることができれば、大きな需要をつかむことができると思っています。私は、相続で取得した空き家を解体し、子育て世代のためのメゾネット型長屋住宅を小さな賃貸住宅として手がけています。おかげ様で、入居者も早期に決まり、喜んでいただいている状況です。私たち工務店も間違いなく需要がつかめる分野でありますので、これからも行政や国の政策を良く見ていく必要がありますね。
 
   

会員様のこころに残る言葉

今、話題のユヴァル・ノア・ハラリ氏の「サピエンス全史」は、ホモ・サピエンスが食物連鎖の頂点に立ち、文明を築いた歴史をひも解く。しかし、見方によっては、農業革命は人類に過酷な生活を強いた、というのです。
 人類の歩むべき道を考えさせられる本となっています。難度は高いですが、読んでみる価値はありそうです。

過去のコラムを読む
ニュース