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理事のコラム

税制から見える住宅事情

 今年の税制改正から、住宅業界への影響が垣間見えます。まず目立つのが、地方創生を行うにあたり、中小企業の事業承継をスムーズに行えるように改正していることでしょう。地方創生には、中小企業の活性化が非常に重要です。どのような手を使ってでも生き残れるようにしていかなければなりません。事業が順調であるにもかかわらず、跡取りがおらず廃業を考えざるを得ない人を救っていかなければならない。住宅業界では、取引先に対する人材派遣の依頼や、事業承継を前提として資本を入れるといったケースも増えてきています。また、跡取りがいるにも関らず、相続税や贈与税の関係で断念する人もいます。これを改善するため、今後10年間に限り、先代の持つ株式の贈与・相続税の負担を実質無税にしていくのです。その背景には、団塊世代の経営者が70歳を迎え、この10年間に最も多くの事業承継が見込まれるという事情があります。これから10年が、日本の中小企業の正念場と言えそうです。仕方なく事業承継者を公募する会社も出てきていることから、それらのケースでも事業承継支援制度が利用できるようです。
 2番目が都市農業の抜本的な見直しです。30年前に施行した「生産緑地法」をどのように改正していくのか?生産緑地に指定され市街化区域内で農業を営むと、宅地並みの課税を回避できる制度でしたが、施行後30年を迎えるに当たり、この法律を改正したのです。後10年延長できる「特定生産緑地」の制定、最低農地面積の下限を300uに、道連れ解除がないような工夫、建築できる建物の種類を広げる、市民農園への貸し出しを可能とする措置などが含まれています。これには市街地内に小さな農園や農業従事者を残していこうという狙いがあります。それ以外にも「国際観光旅客税」や「森林環境税」「タバコ税」も大きく影響すると考えています。
 住宅業界は、政策に大きく影響される業界であるのは言うまでもありません。特に税制には敏感であり、例えば、金利上昇で受注が止まり、消費税が上がる前は駆け込み需要によって受注価格が変わるほどです。今回の改正で、販売店様が工務店様の事業承継に協力したり、流通事業者が人材派遣を加速させる可能性が出てくるでしょう。団塊世代が第一線から退かざるを得ない状況は、住宅業界には大きな影響を及ぼすに違いないのです。実質の経営者が変われば、方針も変わり、事業内容も変わることになります。また、大都市を商圏にしている工務店様は、「生産緑地」は無視できないでしょう。不動産価格に影響が出てくるのは言うまでもなく、賃貸、分譲住宅や非住宅建築物などを目的に、群雄割拠の戦いが始まります。それは、不動産の知識力、情報収集力、企画力が、有るか、無いかで勝負が決まることになるはずです。自社商圏の不動産業の情報ネットワークは、必ずつくってください。
 更に「国際観光旅客税」も不気味です。ビジネスホテル業界が、ますます不動産価格に影響を及ぼし、都市の土地価格の高騰を招いています。ここ数年は、マンション分譲ビジネスがやりにくくなるどころか、土地が買えないのです。そうなれば、小さな土地で済む戸建て分譲事業への転換がますます多くなり、連動するように中古住宅の価格が上昇することになる。外国からの旅行者が急増すれば、マンション空き家の改装が増え、民泊事業も本格的になるでしょう。最後の「森林環境税」は、森林整備を進め、森林の公益的機能を十分に発揮させるための税です。木材価格の変動など、住宅事業への影響度はまだ不透明ですね。
 税制は、国の根本、政府の方針です。大河の流れと言っていい。その流れに乗って事業を行うべきなのです。例えば、「タバコを吸わない人でつくる家」「国産材をふんだんに取り入れた家」「70歳からの家づくり支援」といった商品や戦略も良いかもしれません。民泊専門のリフォーム事業、工務店専門のM&Aコンサルティング事業、生産緑地専門の活用事業なども考えられます。話の内容は、手の届かない遠くの仕事に見えますが、工務店様が手掛けるビジネスは「小さな」がポイントであり、「これなら負けない」と特化する事で十分に戦えます。税制改正が行われる時は、周りを良く見ると仕事につながるヒントが必ず落ちています。優遇されるこの10年で事業承継をしっかりと行い、新しい経営者のもと、地域に根付く会社にしていくことは、川の流れに乗ってしまえば、決して難しいことではないと考えています。




 

本気で取り組む時期に来てはいないか

 平成30年7月豪雨により被災された皆様へお見舞い申し上げます。当協会の会員様もたくさんいらっしゃいますが、早期に復旧することを心より祈っております。
 残念ながら、ここ1カ月余りで、自然災害が次から次へと起きています。大阪府北部の地震、千葉沖太平洋プレートのスリップ現象、今回の豪雨災害、気温35度を越える熱波など、息つく暇もないほどです。この異常気象に関して、地球温暖化が影響していることは言うまでもない。大雨による川の氾濫や土砂崩れは、日本の山林が病んでいる証拠であり、大きな被害へとつながっています。戦後、堤防やダムなどの治水工事は行なわれてきましたが、山林に期待されていた保水機能が急速に失われてきてはいないでしょうか。その一つの要因が、戦後積極的に行なわれた針葉樹の人工林の手入れが不十分な状況にあることではないでしょうか。伐採の時期を迎えた針葉樹の老齢化が進み、国土保全にとって最も重要な保水能力が弱まっている。人工林であるがゆえに、適正な時期に伐採することは必要不可欠なことです。それが、経済的な理由もあるのでしょうが、伐採もされず、充分な手入れも行き届いていない状況にあるのです。結果、堤防の決壊や土砂崩れによって大きな被害を受け、国民の税金や復旧のための労働力を投入せざるを得ないのです。あの土砂崩れ、川の氾濫の責任は、どこにあるのでしょうか?たくさんの人が命を落としましたが、自分の身内であったら「自然災害だからしかたない」と諦められるでしょうか?土砂崩れを止めることはできないのでしょうか?数十年も住んでいる場所が、「氾濫する可能性が高いので、そこには住んではいけない」と言われても、簡単に移住することなどできないと思うのが普通です。
 国産材を利用した木造建築の普及は、最も重要な出口戦略の一つです。バイオマスやパルプへの利用や、ペレットストーブといった話はありますが、人工林の蓄積量から見ると、それらだけでは解決できるレベルではありません。やはり、王道は木造建築の普及ではないでしょうか。国内だけでなく、中国、韓国、インドネシアなど木造建築が少ない国への輸出も促進しなければならない。コンクリートや鉄骨、レンガ積み建築にはない、木造建築のメリットを経験させれば、意識も変わるはずです。実際、沖縄県では、新築住宅の95%がコンクリート住宅でしたが、今では30%以上が木造建築に変わっています。日本で事業に成功した海外の経営者たちが、母国に帰って「快適だった日本の木造住宅」に住みたいと言い始めているともいいます。
 本気で木造建築を普及させる時期に来てはいないでしょうか?これからの時代、可能性があるのが地域に根ざす工務店であり、販売店、材木店、プレカット工場だと考えています。住宅だけでなく、非住宅建築に積極的に関与すべきだと思のです。店舗や事務所、保育園、介護施設、酪農施設など、木造で建てられる建築物はたくさんあります。それらの建築物のすべては、木造化を目指すべきなのです。「国が、行政が」などというのではなく、私たちが工夫することで普及が進み、例えば、リフォーム専門会社において、内装を木質化するだけでも、「山林の保水能力を高めることができる会社」とお客様に訴えることができます。あれだけ、木造建築には横を向いていた設計事務所やゼネコンなども木造建築に取り組み始めています。それに先を越されないように、木造住宅専門の私たちが、住宅から非住宅へ打って出るべきなのです。
 私は、身近なところから、賃貸併用住宅や店舗併用住宅を木造建築で勧めています。そのためには、なんと言っても不動産(賃貸)の知識とネットワークが必要で、いくらで貸せるか?いくらの売上が期待できるか?そこに市場性はあるのか?などの相談から営業展開をしています。地主をくまなく回っている不動産会社の社長、地域の中小企業経営者との交流も情報源になると考え、付き合いを始めました。貸し事務所や集会室などが受注でき、更なるチャンスと捉えています。銀行情報も良い。銀行情報は比較検討を余儀なくされますが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建築物との見積もり合わせを喜んで行なっています。実例ができたら、住宅営業と同じように、完成見学会や紹介キャンペーンを行っています。そのような営業は、地場ゼネコンは行わないし、できないからです。国産材の活用を非住宅建築まで広げて木材利用料が増加すれば、山に資金が還元され、自然災害に強い山林になり、日本のレジリエンス能力を高めることにつながるのです。小さくてもいい、コツコツと、木造建築を本気で増やして行こうではありませんか。


 

健康寿命を考える

 最近、私の周りのサラリーマンが、介護のために生活を変えるケースが増えています。どうしても、身内でなければ介護を受け付けない人もいるようで、休職や転職をせざるを得ない。それも、子育てが終了する頃、働き盛りの50歳前後にこうした状況が起き始めます。同じマンションを2戸購入、完全二世帯住宅の建築など、いわゆるスープが冷めない距離への転居などです。親の資金がある人は呼び寄せるという選択肢がありますが、なかなか思ったように行かないケースが多く、結局、親の住まいの近くに転職を余儀なくされる。転職できるならまだ良い方で、無職の状態が長く続く人も出てきています。結果、日本の就労人口に影響が出始めるのではないかと、懸念しています。
 日本社会として考えなければならないのが「健康寿命」をいかに伸ばすか?ということになります。つまり、介護期間をいかに短くするか?であり、介護をされる側から介護するほうへ1人変われば、2倍の効果があります。残念ながら、老介護施設が充実している県ほど、健康寿命が短いと言う皮肉な結果も出ています。逆に、寝たきり状態を増やす結果となっているようです。また、痴呆症患者が急増しているのも、労働人口を減少させることになっています。
 「健康寿命」を伸ばすには、なんと言っても人生で最も長時間にわたり滞在する「自宅」の改善が最優先です。私たちの最も得意な分野でもある「性能アップリフォーム」による効果が高いと考えています。性能の中でも、第一は空気環境で、温湿度、綺麗な空気、音、光、においも大事なファクターとなります。高齢になればなるほど、健康に影響してくるのが空気の質といえます。もう一度、うちエコ診断技術を勉強したいものです。
 その次は、水ではないかと考えています。飲み水はもちろんのこと、入浴、トイレ、洗面、洗濯も健康に影響すると言われています。健康に良い水が取水できるエリアは、それだけで恵まれていますが、そのようなエリアは日本では少ないですよね。ほとんどが大きな川や湖の水を浄化するだけの水道水になっています。ペットボトルや宅配による水が急増していることは、水道水では不十分だと感じている証拠です。最近では、医療のために開発された機能で、水を分解したり、浄化したり、水素水に変えたりしています。どこまで、効果があるかはこれから検証が必要ですが、医療の器材が住宅に入り込んできていることは確かです。水や空気以外でも、転倒防止、室内での移動しやすさ、快眠の工夫、医療機関との連携なども住宅内に必要な性能だと考えています。高齢者は自宅に滞在する時間が確実に増えます。だからこそ、住宅業界が「健康寿命」の延伸に積極的に関与すべきだと考えています。「お客様の健康寿命を伸ばしたい、そのような家や建築を手がけています」と打って出たいものです。
 手術や薬で解決する時代ではなく、普段の生活の中で事前対策をしっかりと講じ、健康寿命を長くしたいと考えています。「ピンピンころり」の社会にしていきましょう。

 

心に残る言葉

「仕事を任せることが、人を育てるために大切である」
伝説の外資系企業の経営者、新将命氏の言葉。しかし、任せられないトップが多いことも確か。なぜ任せられないのか?「任せる重要性を理解していない、社員を信じていない、自分の能力を過信している、正しい任せ方を知らない、自分に自信がない」からだと言います。そこで、解決策がでてくる。
 8月に、新氏の最新本が出版されます。「社長の教科書」。読んでみたい本です。

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