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理事のコラム

空き家対策ビジネス

 地方都市ほど、行政と民間が協力しながら空き家対策を考えて、色々と実行しようとしています。それほど、人口減少や税収減が深刻なのです。一方、沖縄の石垣島や宮古島、東京都心などは、旅行者だけでなく居住者も増えたことで、住宅不足に陥っています。晴海の東京オリンピック選手村のマンションは、売り出しをしたら十数倍の申込みがあったそうです。また、石垣島などでは、コンテナを船で運び、コンテナハウスに改造してまで住まいに当てているほどです。同じ日本でありながら、どんどん地方都市との差が開いていると感じます。だからといって、私たち工務店事業者は、地元を離れて人口が増えている都市で商売をはじめるわけにもいきません。自社の商圏内の住宅ビジネスを、如何に変えていくかが大事なのです。そこで、空き家対策ビジネスに便乗していくべきだと考えています。
 当協会で活躍していたK氏は、定年までは都心での仕事に従事し、職場近くにマンションを購入して家族と住んでいました。しかし、ご両親が他界した後、築140年にもなる実家をどうすべきか悩んでいました。雪国の農家であり、人口の減少が著しい地域です。売るに売れず、庭や畑、農機具倉庫を持つ80坪以上ある古い家に手を焼いていました。そして、奥様も子どもも移住する気はありません。色々と検討した結果、築140年の田舎の住まいというメリットを前面に出し、「素泊り宿」の経営に乗り出しました。
 クラウドファンディングで改装を行い、今では世界中からお客様が泊まりに訪れます。毎日イベントやパーティを開き、近隣の人たちを巻き込んで楽しんでいます。あと数年で70歳になるK氏の最終目的は、「素泊り宿」を事業として引き継いでくれる人を探すことであり、その実現も視野に入ってきています。ビジネスと言う付加価値を付けて、空き家を見事に再生させたのです。
 東京都墨田区にあるA不動産会社は、ある一定の条件に合った空き家の購入、または、借り上げに積極的です。その目的は、外国人客目当ての旅館業の経営です。200u以下(建築基準法上の基準が緩和される)の古家を改装し、宿泊施設に変えます。半径数百メートルの円の中心に事務所を設置し、スタッフを常駐させて運営する仕組みです。これまでに5、6件の空き家を再生していますが、今後、10件ごとにまとめ、駅ごとに受付事務所を設置していくことで事業拡大を狙っています。浅草や東京スカイツリー、東京ディズニーリゾートなど、魅力ある観光地を意識した空き家活用術です。
 書店に行くと、空き家対策ビジネスの本はたくさん販売されています。それだけ、日本社会の大きな課題でありながらも、ビジネスチャンスと捉えている人が多いということでしょう。空き家になる主な要因は、所有者が、亡くなる、施設に入る、子どもの住まいに移住するといったことが挙げられますが、昔より2世帯住宅に建て替えるという選択肢が減少していることも大きいでしょう。大都市では、団塊世代がやっと手に入れたマイホームが多く、2世帯住宅にするほど大きな土地ではありません。団塊ジュニア世代も、マンション購入が中心で同居もままならないでしょう。その結果、「亡くなるまで」「施設に入るまで」古家に住み続ける高齢者が増え、いざ空き家になった時に他人が利活用するには限界がある建物が多いのです。
 空き家は、今の建物のままで、あるいはリフォームして、「自分で使う」か「売る」「貸す」「ビジネス施設へ変える」などの利活用が考えられます。一方で建物を取り壊し、土地として「活用する」「売る」「貸す」という選択肢もあります。しかし、何もせず放置してしまう所有者が多いことが、社会問題になっていると思うのです。不動産や建築に関して素人である所有者に、私たち工務店が積極的に空き家の利活用を提案していけば、大きなチャンスにつながるはずです。そのためにも、不動産の知識や情報は積極的に取得していくべきでしょう。
 まず、自分たちが置かれている商圏のマーケティングを行ってみましょう。必ず、自らの商圏内には何らかの特徴があるはずです。上記の2つの事例は、既存の観光施設に目を向けたものです。世界遺産や日本の農村、祭りなどに注目し、海外の人に向けて情報を発信し続けた結果、空き家が人気の素泊り施設に再生した事例や、スカイツリーや浅草といった世界中から注目されるエリアに絞り、新しい旅館業を展開する不動産会社の事例。これら全てのスタートは、マーケティングからなのです。住宅としての魅力を失ったとしても、住宅以外で魅力を出すことは不可能ではありません。貸家以外でも、トランクルームやコインランドリー、パーキング施設、小規模ソーラー施設、小規模保育施設などにもできるでしょう。
 何度か提案していますが、市民レベルでも「複数拠点所有」を推奨しています。例えば、大都会のビジネス用マンションと、週末に過ごす用の郊外の一戸建住宅や、冬は都会のマンションで執筆活動用、夏は涼しい高原で農業活動用の家などです。いわゆる生活の拠点を増やしていくことです。もう一つの拠点があれば、大震災も怖くありません。その結果、空き家の利活用にもなります。まだまだ日本の不動産、建築事業には、面白いビジネスが転がっています。


 

不動産の情報力が重要

 戦後から高度成長時代までは、建設事業と住宅、不動産事業は住み分けができていました。建設会社を支えていた公共事業が減少していく中で、建設会社も民間事業へ比重を変えていかなければなりません。民間の会社から建設の発注をいただくことは、その会社のビジネスを応援していくことになります。マンション事業が良い例で、Hコーポレーションは、数十年前から土地情報をデベロッパーに持ち込むことで、マンション建設の受注につなげています。介護施設や保育施設は、土地情報を持ち込んだ建設会社に特命で発注します。今では、商業施設や物流施設、ホテルも同じです。結局、重要となる情報は土地情報なのです。
 分譲事業やアパート経営、賃貸事業などの専門会社が存在しますが、言うまでもなく不動産情報に強い会社が生き残っています。また、住宅メーカーのSハウスやDハウス工業の事業内容は、賃貸住宅事業や商業施設、物流施設の建築請負が主となってきており、注文住宅事業の売上高はもはや20%もないようです。住宅メーカーが中堅建設会社の買収を進めているのも、「土地情報」から「非戸建て建築の請け負い」につなげ、売上をつくっていくというビジネスがこれからも期待できると思っているからなのです。
 私たち工務店が、大手の住宅会社と同じ土俵で戦っても、勝てる可能性は低いでしょう。ですから、土俵を変えていかなければなりません。しかし、「不動産情報が、建築受注に影響する」という流れは一緒です。ポイントは、「小さな土地情報」ではないかと考えています。「大きな土地」では、多額の資金が必要になり、資金力がある会社でなければ対応できない事業になってしまいます。私たち工務店にしてみれば、住宅地の延長線などで発生する「小さな土地情報」がもっとも手に入れやすい情報です。「裏庭の有効利用」「ガレージの縮小」「物置スペースの活用」「空き室の活用」などを提案できれば、リフォーム工事や外構工事につながります。
 課題は、「小さな土地情報」をどのように取得していくかということです。その一つが、商圏を絞っての「空き地・空き家調査」です。自分の足で歩けば、必ず情報が得られます。一つひとつの情報を住宅地図に落とし込んでいき、登記簿から所有者を探し、オリジナルのデータベースを構築します。そして、「空き地・空き家相談会」を行う旨を「告知」します。私も東京都府中市で、空き家からアパートへの建て替えを受注したので、建築工事に併せて現在実行しています。たった数時間歩いただけで、20件以上の「空き地・空き家」を選定することができました。建築中の現場で、10月初旬に「相談会」を行う予定です。もちろん、ダイレクトメールを送り、チラシも配布します。完成見学会の実施まで、繰り返し「相談会」を行おうと思っています。
 次に行っていただきたいのが、「OB客」との接点づくりです。定期点検や感謝祭、見学会も良いでしょう。とにかく、OBのお客様と会うチャンスを創りだすことです。OBのお客様の情報は、当人だけでなく、お子様や親戚、友人などの「土地情報」にもつながります。私は、アパート受注を中心に仕事をしていることもありますが、3年間で3億円以上の発注・購入をいただいているOBのお客様が数人存在します。月に一度は、投資案件や、成功事例といった不動産情報を持って訪問し、馬鹿話をしています。すぐには成果につながりませんが、年に一度は仕事をいただけるようになるのです。
 もう一つに、地元の人たちと交流を持つことです。どのエリアでも、地域活性化について真剣に取り組んでいるグループがあると思います。シャッター通り商店街や空き家の対策、高齢者の支援など、課題はたくさんあります。そこにチャンスがあると考えています。一緒に色々なことを解決する中で、「土地情報」が入ってくるのです。
 建築は、土地がなければできないビジネスです。戦後、あらゆるインフラが不足していた時代は、土地を行政が取得して、建築や土木工事を発注してくれました。人口が急増したこともあり、住宅地の不動産開発が活発に行われました。そして、住宅会社は住宅会社として成り立ちました。しかし今は、インフラも整備され、住宅が溢れている時代です。そのような時代だからこそ、不動産の扱いに困っているお客様を支援していくことで、仕事をつくっていくことになると考えています。


 

日本のスポーツが経済へ好影響を及ぼす

 来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、いよいよあらゆる業界が動き出していると感じています。陸上競技が好きなこともありますが、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)というオリンピック選考レースは大成功したと感じています。明快な選考方法であり、選手やコーチ、ファン、マスコミ、スポンサーも大満足ではなかったでしょうか。特に男子上位30名による、レース中の駆け引きや心理戦は非常に見応えがありました。マラソン競技はこんなに面白いのかと、誰もが感じたのではないでしょうか。残り1Kmでの3選手の目配りや足の動き、鼓動など、真剣勝負をする男たちを垣間見ることができました。あれだけ熱く盛り上がったのは、やはり日本開催のオリンピックが控えているからでしょう。
 また、故・金栗四三氏が、「マラソン選手を育てるため」と言って開始したいわゆる箱根駅伝で活躍した選手が成果を出したことも、日本の長距離競技の未来に光が指してきたと感じました。一つの競技でこれだけ多くの観客が応援するスポーツはなく、テレビの視聴率も高かったようです。来年までに指定されている3つのトライアルレースもきっと盛り上がるでしょう。これから1年かけて、陸上競技以外でも選考大会が始まります。体操や水泳、柔道、レスリングなど、金メダルが期待できる種目ほど日本国内の選考大会は盛り上がるはずです。今後開催される日本選手権がもっとも有力な選考会であり、観客動員数も期待できるでしょう。
 また、9月20日にはじまったラグビーワールドカップ2019が盛り上がりを見せています。日本が初戦のロシア戦、そして世界ランク2位のアイルランドにまで勝ったことで、まだ1カ月以上続く大会期間中は、世界中のラグビーファンが日本に注目するはずです。各チームの試合間隔は、4日から1週間程度あります。選手はその間休養と練習を行うでしょうが、訪れている人々は日本の観光地巡りをすることでしょう。開催地が北海道から九州までと広い範囲で行われているのも、間違いなく戦略の一つです。
 10月1日に消費税率が引き上げられ、景気の後退を懸念する人たちもいます。しかし、スポーツ大会の盛り上がりが、経済を下支えするといっても過言ではないと思います。スポーツ界や飲食業界、ホテル業界、観光業界だけでなく、マスコミ等の芸能界も好景気になるはずです。国民が日本代表選手やチームを熱狂的に応援することで、消費増税のマイナスイメージを一時でも忘れてしまうような状況になると、住宅業界も大きな影響を受けると思っています。各地に増えてきている空き家が、小さな旅館やゲストハウス、食事処などに変わっていく過程で、リノベーション業が活性化すると思います。来年度の予算案の中には、補助金や新しい支援策などが次々に出てきています。この事業は、私たち工務店にとって、すぐにでも手がけていかなければならないことの一つです。遅れを取らないようにアンテナを高くして、新しい事業に取り組んでいきましょう。

 

 

心に残る言葉

「みーたん,がんばれ!」
 修学旅行中の小学生の応援の言葉。
 年に3回、両国国技館で行われる大相撲の本場所を観戦に行きます。朝7時前に並ぶと当日券(約300枚)が購入でき、朝8時半から夕方6時まで観戦することができます。そして、8時半から行われる序の口力士の取り組みから見学をします。相撲が何よりも好きな人が、朝一番の取り組みから、声を張り上げて見ています。そして、幕内の取り組みになると会場は異様なほど盛り上がりを見せ、テレビ観戦では味わえない応援・歓声の中、一瞬の勝負に集中します。相撲観戦が長野県の修学旅行のコースになっており、私も子どもたちと一緒に応援します。「みーたん」は言うまでもなく「御嶽海関」のことです。故郷の子どもたちの必死な応援の声が、なんとも心地良いのです。

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