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理事のコラム

7年前、2010年掲載「70万戸時代をどう生きるか」

 9年前、リーマンショックをきっかけに住宅着工数が100万戸以上であった時代から一気に80万戸台に落ち込んだことで、住宅業界は危機感を持った。しかし、ここ数年は低金利政策や相続税の改定に下支えされ、マンション分譲の落ち込みはあるものの、一戸建分譲住宅と賃貸住宅については好調さを見せています。90万戸前後の着工戸数を確保してきたことで、少し危機感が無くなってきてはいないでしょうか。今年に入ってから、賃貸住宅の着工に水を掛けるような金融庁の記事が出ています。私たちは大きな舵取りを迫られているのではないでしょうか。
 7年前のコラムを読み直すと・・・ 昨年度(2009年度)の新設住宅着工数には、時代が大きく変わったと誰もが気付かされました。一昨年(2008年)のリーマンショックがきっかけだといいますが、日本のネクストソサエティーを分析すれば、数年前からある程度は想像できたはずなのです。しかし、今までの経験や事業の内容を優先し、思い切って戦略を変えることはできませんでした。ほとんどの会社がそれまでのやり方を改善するだけで一定の成長が望めたからです。しかし、さすがに昨年度の着工数を目の当たりにした多くの経営者は、今までの戦略の延長線では生き残れないと感じ、経営戦略を変えようとしています。あのリーマンショックは、「いい加減に気付け、時代は変わったのだ。住まいへの取り組み方を変えろ!」という、一つの目覚まし時計だったようにも思います。
 単独展示場のモデルハウスを持っていた住宅会社の話です。20棟前後あった受注棟数が2009年度は6棟にまで落ち込みました。ここまで新築の受注量が減少するとは想像していなかった。売上を伸ばすためには何でもやろうと意気込んではみたものの、新築住宅の受注向けにつくられた営業・仕入れ体制では、関わる全ての人が慣れている新築住宅の受注にしがみついてしまう。そんな気持ちでは、リフォーム事業のお客様には受けいれてもらえません。
 分譲住宅にチャレンジしても、不動産売買の知識が足りないため魅力的な分譲地が仕入れられず、モデルハウスも販売用不動産もさらに重くのしかかることになってしまった。当然、キャッシュフローはどんどん苦しくなった。2008年まではOB施主様向けに感謝祭を派手に行なっていたものの、とうとう見直しをせざるをえない状況にまでなっているようです。
残念ながらOB施主様からの紹介を中心にしていた新築営業スタイルが崩れ始めたのです。一方、新築住宅専門となっているハウスメーカーやパワービルダーの今後の戦略は、@ローコスト、コンセプト商品の開発A下職、仕入れメーカーへの値下げ交渉B販売費を含めた経費削減の3つが上位を占めています。やはり新築受注への取り組みが最優先されています。上記の戦略で根本的な問題の解決ができるのでしょうか?私には、一時しのぎの消極的な解決策に感じるのです。
 戦後の住宅業界は、高度経済成長や人口増加、核家族化、欧米の文化への憧れなどから住宅の存在価値、生産方法、維持管理の仕方まで新築優先、大量供給というスタイルをつくり上げてきました。それに乗り遅れまいと工務店事業も大きく変わってきました。それが住宅会社の存在価値であり、生き残るすべでもあったのです。大手ハウスメーカーや分譲住宅会社の下請け、マンションの木工事請負、新築賃貸アパートなどに売り上げが支えられてきたことは確かです。その需要が確実に減少する中、どのように変えるかということになります。変化を起こすには、経営資源のうち流動性のないものが多いほど不利になるといえるのではないでしょうか。事業用不動産、工場、建設機械、本社ビル、転売できないモデルハウスなど、成長期には安心材料となっていた資源が固定費となって重くのしかかります。ほとんどの会社が、その資源を生かそうと戦略が組まれます。結果、全てが商品コストとなり、商品価格競争力が弱まり、同じようなビジネスを持つライバルには勝てなくなります。このような変化を求められる時代は、「物」よりも「人と情報」という資源が有利になります。人脈、地域情報、近くにいる安心感、社長の人間的魅力などがある工務店が圧倒的に有利になるということです。
 それではどうすれば良いのでしょうか?このような時代は、固定費用が少ない工務店ほど軸足を変えることに有利です。だからこそ、全国に約5千万戸が存在するとされるストック住宅に軸足を移すことをおすすめします。ストック住宅の受注活動の延長線から、多少の新築住宅受注もあるでしょうが、これまでの新築住宅を中心にした工務店経営を見直し、自分の商圏内のストック住宅を調査し、自社が置かれている状況を確認してほしいのです。
 築20年以上の建物が周囲にいくつ存在していますか?20年前に分譲していた住宅会社は存在していますか?それらの住まいは安全ですか?寒くないですか?世代は変わっていませんか?移住の要望はありませんか?子どもの部屋が余っていませんか?お客様は自宅のことで明らかに困っているはずです。また、今まで関係をつくってきたOB施主からの紹介を期待するのではなく、OB施主に再度お客様になっていただくのです。我々には耐震診断や劣化診断、断熱診断、補強提案という最大の武器とがあります。彼らの困りごとや不安を取り除くことができる力を持っているのです。これからの時代は、「家守り」「住まい手守り」を実践できる会社が、ますます存在価値を持つと信じています。
 時代の流れをみると良くわかります。いずれ70万戸時代はいやでも訪れるでしょう。しかし、新しい需要が生まれることも確かなのです。いつ舵を切るのか、軸足を変えるのかが経営者の判断にかかっています。

 

完成見学会を実践しよう!

 注文住宅の受注、特に建て替えの場合には完成見学会ほど効果のある集客方法はないですね。なんといっても、お施主様が将来のお客様を連れてきてくれます。また、ご近所の方々は工事中から興味を持つことが多く、最新の住まいを見てみたい、体感してみたいと思うようです。直ぐに建て替える見込みのないお客様でも、完成見学会に来場いただくことはファンになっていただくための第一歩で、将来の大きな味方になる可能性があります。しっかり対応することで、高評価での口コミを期待できるからです。完成見学会は、多くの方に見ていただくことが大事だと思うのです。自宅の生活風景は見せたくないお客様も、入居前の住まいであれば、自慢したいものなのです。
 私の仕事が低層賃貸住宅の請け負いということもあり、引き渡し直前に必ず完成見学会を実施するようにしています。賃貸住宅は自宅の建て替えに比べ、同意を得るのが難しくありません。近隣の家(地主)へご案内することはもちろんのこと、金融機関様や賃貸不動産会社様、資材メーカー様などのプロユーザーにもご案内するようにしています。とにかく、良いイメージを持っていただき、口コミを期待しているのです。昨年だけでも、お施主様からご兄弟様を紹介していただき2棟10戸の低層賃貸住宅を受注したケースや金融機関からオーナーと案件を紹介いただいて受注したケース、息子夫婦の新居の隣地を購入してご両親から1棟2戸を受注したケースもあり、完成見学会がきっかけになっていると感じています。
 6月15・16日の2日間、宇都宮市内で木造コンビ二の完成見学会と低層賃貸住宅の上棟見学会を行いました。プロユーザーに絞って案内し現地の準備を進めました。一般のお客様と異なりプロユーザーは平日開催の方が集めやすいですね。一ヶ月程度前から、手作りのチラシをつくり、メールや電話などでご案内しました。N社の取引先の販売店様や住宅会社様、地元の不動産会社様、金融機関様、更には農協などへも情報を提供したのです。しかし、手当たり次第に情報を発信するのではなく、来ていただきたい、見ていただきたい、ビジネスにつなげたい取引先様に絞りました。結果は10組の来場となりましたが、その代わりにほとんどの方に1時間以上説明ができました。
 現地の設えは、駐車場の用意や受付の設置なども必須ですが、着座をすることは少ないので、室内に話ができるコーナーを設けるといいですね。今回は、コンビ二の店舗にご案内し、事務室や電気設備、特殊倉庫などバックヤードを見学できるスペースを確保しました。プロユーザーは、「建築コスト」「工期」「工事職種」「外構工事内容」などが気になるようで、多くの質問をいただきました。また、最も大事な受注に関して、お客様の探し方やアプローチ方法を説明させていただきました。住宅会社様には「取組」が、不動産会社様や金融機関様には、「土地活用の相談」が伝わったと感じています。
 完成見学会を実施することで、お客様との接点を数多く持つことができます。来場されなくても、案内を繰り返し行うことで、お客様の興味をひくことができると考えています。「A社は、またまた見学会を行っている。売れているんだなぁ」「このような建築もやっているんだなぁ」と感じてもらえば、自社ファンの一人と考えて良いのです。いずれ、家族の環境が変わったときに、会社やブランドの名前を思い浮かべてもらうだけでも他社と差別化になるでしょう。それだけ完成見学会は請負事業にとって重要なイベントです。会員の皆様もぜひチャレンジしてください、必ず成果につながります。私も、七月に千葉県大網白里市、八月には横浜市鶴見区、九月には東京都北区赤羽において、低層賃貸住宅の完成見学会を行う予定でいます。

 

企業フィロソフィーを持つ

 フィロソフィーと言えば、稲盛和夫氏が京セラ鰍竄jDDI鰍ネどで導入してきた経営術の一つです。組織を活性化する上では、企業理念とともに必須と考えています。家訓や創業者の語録として残っていることもあるでしょうが、社員は仕事において壁にぶち当たったときに、判断する指標が欲しいものです。私が勤めるN社の社員も常に携えており、ずいぶん助かっています。そのフィロソフィーをいくつかご紹介します。
 @ 「いつも楽しく、わくわくワーク」 仕事が難しく感じるのは、知らないからである。まずは、知ることである。知ることができれば好きになる。好きになれば、楽しくなる。楽しくなれば、わくわく仕事ができるようになる。
 A 「美点凝視で、人を好きになる」 人には誰でも長所もあれば、短所もある。会社というものは、仲間の集合体であり、仲間のために何ができるかと言う目線で、互いに思いやりをもって接して欲しい。美点凝視を持てば、好きになるものである。
 B 「守(基本)・破(型)・離(創造)」 新入社員は、ひたすら上司や先輩の話を聞き、まねて、行動基準とスキルを身につける。あれこれ考えるのではなく、決められた「型」、基本を習得することを最優先する《守》。しっかりとした知識をベースに「型」が完璧に習得できたら、自分なりの考え方や強みを加えてこの「型」を破り、更なる発展を試みる《破》。そして、プロフェッショナルとしての自信とともに、基本となった「型」を離れ、創造性を存分に発揮して欲しい《離》
 C 「少しぐらいはやってもいいだろう、はすべて悪いこと」 日常行動の中で、迷い、不安に思ったときには、5つの指標に則って判断すると良い。法律に違反していませんか?企業理念に沿っていますか?社会の良識から外れていませんか?家族に見られて恥ずかしくはありませんか?自身で正しいと思いますか?
 D 「実務の現場には、課題も解決策も落ちている」 実務がわからなければ、何が欠落しているのか、何が役に立つのかも理解できない。管理職は、実務に入り込み、実務を深く理解し、自ら率先して問題解決に臨まなくてはならない。実務を理解しようとしない人に、社員の将来を委ねるわけにいかない。
 ほんの一部ですが、N社の考え方や行動基準なるものが見えませんか。このフィロソフィーがあるからこそ、社員や関係者との「仲間」の意識が強くなっていると思えるのです。自分の行動にも制限が加わり、「俺が、俺が」が少なくなり、「仲間のおかげ、おかげ」という意識が出てきます。自分のことですが、企業フィロソフィーの影響を相当受けていると感じているのです。私たち住宅業界は、組織の中で仕事を行うことが多いと感じます。一人でも仕事に取り組むことのできる作家や音楽家、画家といった芸術家と違い、仲間や取引先が必ずいますよね。たくさん協働しなければ、何一つできないのが住宅事業です。だからこそ、一つの考え方を共有することで、お互い気持ち良く仕事に取り組むことができます。会員の皆様も作ってみてはいかがですか?普段、社長が口にしている言葉を書き控え、壁に貼り付けるだけでも、オリジナルのフィロソフィーになり、共通の行動原理が共有化されます。
 
   

心に残る言葉

 「人を動かすのは、口や理屈ではなくて、まさに感動させることです。人に感動させる力がなかったら、人を動かすことはできないのです」
 行徳哲夫氏の言葉です。行徳氏は人間学を教え、松岡修三さんをはじめたくさんの人を指導してきました。感性や感動をどのように身に着けるか、それを人生に生かすかが大事なのだと解きます。

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